周りに極端な被害妄想と思われる方がいらっしゃったら...
これまで、被害妄想の原因の一つとして、統合失調症という病気について解説してきました。
もし、あなたの友人知人、家族がこの病気にかかってしまったら?
統合失調症特有の症状として、病識(自分自身の異常な体験や異常な行動を病的なものであると判断できること)がない、と言うことがあげられます。
本人は妄想したこと、幻聴で聞こえたことなどを真実だと信じ切っています。自身の心の中で起こったことが、真実の全てであり、例えそれが荒唐無稽なことであったとしても、疑う余地はありません。
この信じていることを自分以外の人間が否定し、正しい意見を言ったり、思い違いだという証拠をあげたりしても、本人にとっては確信していることであり、訂正不可能なことなので、全く耳を貸さないというのが、多いのではないでしょうか。
このような病気の人を前にすると、
たいていの人は、本人のいっていることの矛盾点を指摘して、それが間違っていること、妄想であることを納得して貰おうとしてしまいます。
しかし、これは逆効果です。
その場は納得しても、自分の妄想を正当化する情報や理論を探し出し、或いは構築してしまいます。
そして、往々にして、指摘された方との信頼関係も失ってしまいます。
では、統合失調症にかかられてる可能性のある方が周りにいらっしゃったら?
私が参考にしている本『レッスンとうごうしっちょうしょう/三野善央著』によれば、
それが、友人知人である場合と、ご家族とでは、対応の仕方も違ってくるそうです。
友人知人の場合は、統合失調症に本気で対応するのはむずかしいですし、治療にもよくないそうです。統合失調症の症状に反応するひとの数が多いほど、症状はエスカレートしてしまうからです。
できれば、その方とは直接会って話をしたり、長電話したりするのは、しばらくやめた方がいいかもしれません。
とはいえ、避けてばかりでも、変に勘ぐられ疑心暗鬼にさせてしまうのも、よくありません。
実際に話をする時には、なるべく、その様な話題を避け、妄想や幻覚に関する内容になってしまった場合は、はっきり肯定も否定しないようにしましょう。
「私にはそういうものは見えないから、よくわからないなぁ」や「そうかな、ちがうかもしれないけど」程度のやわらかい返事がいいようです。
また、逆に肯定的な返事は、統合失調症の症状を助長してしまうので、禁物です。
そして、家族に任せ、家族をサポートして上げるのが、友人としてのおつきあいだとのことです。
ではご家族の場合は....
家族は、患者さんにとって、唯一の味方と言ってもいいかもしれません。(実際には皆さん味方なんですが、患者さんから見て味方に見える、という意味です)
そんな家族にまで、全否定されてしまったら....患者は絶望感に覆われてしまいます。
以下、前述の本より
妄想の内容にあまり触れずに、
「大丈夫だ。どんなことがあってもお父さんがおまえを守ってやるよ」
「何がおころうとお母さんはあなたの見方よ」
と言ってあげてください。
そして、特に急性期には出来るだけ早く精神科を受診して、薬を投与して貰うことです。幸い現在の多くの統合失調症の薬は、こうした妄想や幻聴によく効くのです。
また、幻聴、妄想に対しては、「聞こえることはよくわからないけど、つらいんだよね」「今はつらいけど、問題は解決するよ」などと言ってあげる。
ということです。
そして、もう一つ大事なことは、統合失調症だとしても、「頭がおかしくなった」「大変なことになってしまった」「危ない、何しでかすかわからない」「人格崩壊だ」「もう治らない」などと絶望視しないでください。偏見の目で見ないでください。
統合失調症は、数多(あまた)ある病気のひとつであり、必ず治ります。
また、統合失調症を生みやすい家庭環境というのもないと、科学的に証明されているそうです。
ですから、自分たちが、ご家族をこの様な病気にしてしまったなどと、考えないことです。
そして、ご家族だけで思い悩まないことが大事だと言うことです。
前述の本には、お近くの保健所、精神保健福祉センターへ相談するようにとありました。
世の中の盗聴器が一つでも少なくなるようにと同時に、
少しでも、このような病が減るように、これからも活動していこうと思います。